生成AIの社内ガイドライン雛形|禁止事項・権限・ログまで1枚で設計(2026年版)
最終更新日: 2026年2月18日
「現場がChatGPT/Claude/Copilotを使い始めたが、情シス・法務の不安が強く稟議が止まる」——中小企業では、この状態が最も多いです。 重要なのは、禁止で止めることではありません。安全に使える状態を作り、統制しながら広げることです。
本記事では、社内共有にそのまま貼れる「1枚雛形(コピペ可)」と、30日で運用まで持っていく手順、部門別のOK/NG例、FAQとチェックリストをまとめます。 情シス兼DX推進担当が、最短で合意形成できるように「決めること」と「決めないこと」の境界も明確にします。
社内ガイドラインは「禁止」ではなく「安全に使える状態」を作る
ガイドラインは「使っていい範囲」を先に定義し、権限とログで統制する文書です。 禁止事項だけを増やすと、現場は個人アカウント(シャドーAI)へ逃げやすく、監査も教育もできません。
なぜ今「雛形」が必要か(現場は既に使っている)
現場は「便利だから」先に使い始めます。だからこそ、理想論の禁止ではなく「事故が起きる前に、最低限の境界線を引く」ことが優先です。 雛形があると、法務・情シス・現場の議論が「言葉」ではなく「項目」に落ちるため、合意形成が一気に進みます。
この1枚で決めること/決めないこと(境界線)
- 決めること: 対象範囲(誰が/何を/どのツールで)、入力NGの基準(データ分類)、禁止事項(NG例)、権限、ログ、例外申請、インシデント初動。
- 決めないこと: すべての業務ユースケースの可否(最初から網羅しない)、完璧な法的判断(個別案件は法務レビューへ)、ツールの細かな設定手順(別紙の運用手順へ)。
まず決めるべき3点:入力ルール・権限・ログ
最初に決めるべきは、運用が崩れたときに戻せる「骨格」です。特にこの3点が曖昧だと、事故対応も改善もできません。
入力ルール
データ分類で「入力OK/NG」を判断。グレーは例外申請へ。
権限
誰がどの機能(連携/共有/ファイル)を使えるかを役割で分ける。
ログ
「目的・入力区分・利用ツール・出力用途」を残し、監査と改善に使う。
社内ガイドライン、まずは1枚でOKです
社内共有しやすい「1枚版」+チェックリスト付き。まずは雛形だけ受け取って、稟議・合意形成を前に進めましょう。
生成AIの社内利用で起きるリスクと、ガイドラインに落とす論点
ガイドラインは「事故を防ぐ」だけでなく、事故が起きたときに止血できるようにする設計です。起きるリスクから逆算して、必須項目を押さえます。
情報漏えい:何が漏れるか(機密/個人情報/取引先情報)
事故は「悪意」より「うっかり」で起きます。例えば、提案書の要約を依頼したつもりで、顧客名・単価・契約条件をそのまま貼り付けてしまうケースです。 対策はシンプルで、入力データを区分し、入力OK/NGを明文化することです。
| データ区分 | 例 | 入力可否(基本) |
|---|---|---|
| 公開情報 | 自社サイト、公開プレス、公開FAQ | 原則OK |
| 社内情報(一般) | 手順書、社内ルール、一般的な業務メモ | 条件付き(ツール/権限/ログ前提) |
| 社外秘・機微 | 契約、価格、未公開売上、設計、ソースコード、認証情報 | 原則NG(例外申請) |
| 個人情報 | 氏名、住所、電話、メール、履歴書、健康情報 | 原則NG(原則入力しない) |
著作権・商用利用・ブランド:生成物の扱いで揉めるポイント
文章・画像・動画・コードは、論点が少しずつ違います。共通するのは「生成物をそのまま採用しない」ことです。対外発信・商用利用は必ず人が確認し、必要なら出典やライセンスを確認する運用にします。 画像/動画の商用利用の注意点は、以下の記事も参考になります。AI画像生成おすすめツール比較/AI動画生成ツールおすすめ比較
品質・説明責任:誤情報/差別/幻覚をどう扱うか
生成AIはもっともらしい文章を作れる反面、誤り(幻覚)や偏りが混ざることがあります。ガイドラインでは「最終責任は人」「対外文書はレビュー必須」を明文化し、レビューの粒度(誰が、何を、どの基準で見るか)を決めます。 人事・採用ではバイアスや差別リスクが増えるため、後述の部門別運用例で具体的に扱います。
ツール連携(エージェント/自動化)が生む新しいリスク
RAGやエージェント、自動化ツール連携は、便利な一方で「権限委任」「ログ欠落」「意図しない外部送信」が新しい事故になります。 例えば、社内データを検索して回答する仕組み(RAG)や、外部サービスへ自動投稿するエージェントは、接続先の権限と監査が最重要です。 仕組みの基礎はRAG(検索拡張生成)とは?とAIエージェントとは?を押さえると理解が速いです。
【コピペ可】生成AI 社内利用ガイドライン雛形(1枚版)
まずは最小セットで暫定運用し、ログを見ながら改定するのが現実的です。以下はそのまま社内文書に貼れる「1枚版」です(穴埋め前提)。
対象範囲(対象者・対象ツール・対象データ)
ここが曖昧だと、例外が増えて運用が崩れます。「誰が」「どのツールで」「どのデータを扱うか」を先に固定し、例外は申請で拾います。
禁止事項(入力NG/出力NG/共有NG)
禁止事項は抽象的に書かず、現場が判断できるNG例で書きます。特に「入力NG」と「生成物をそのまま外に出す禁止」の2つが重要です。
権限・ログ・承認(最低限の運用要件)
「個人利用」から「業務利用」へ上げる分岐点は、権限とログです。誰が何をしたかが追えないと、監査も再発防止もできません。
例外申請とインシデント対応(止血の手順)
例外が発生するのは正常です。重要なのは、グレーを放置せず、申請で可視化すること。インシデントは「初動テンプレ」があるだけで被害が小さくなります。
# 生成AI 社内利用ガイドライン(1枚版/雛形)
## 1. 対象範囲
- 対象者: (例)全社員/一部部署( )/委託先(可/不可)
- 対象ツール: ChatGPT / Claude / Gemini / Copilot / その他( )
- 対象データ: 公開情報/社内情報(区分により制限)/個人情報(原則禁止)
## 2. 入力ルール(データ分類)
- 入力OK: 公開情報/自社が公開済みの情報
- 原則NG: 個人情報、社外秘、機微情報(契約・価格・設計・ソースコード・認証情報 等)
- 例外: 申請/承認フローを通し、ログ保存と影響範囲確認の上で実施
## 3. 禁止事項(コピペして使えるNG例)
- 入力NG: 顧客名・住所・電話・メール、契約書、未公開の売上/原価、認証情報(APIキー/パスワード)
- 出力NG: 生成物を「事実確認なし」で外部公開、著作権/ライセンス不明の画像・文章を商用利用
- 共有NG: 生成結果を社外に転送、個人アカウントでの業務データ取り扱い(許可なし)
## 4. 権限・ログ・承認(最低限)
- アカウント: 会社管理アカウントを原則とする(個人アカウント利用は条件付き)
- 権限: 役割に応じて機能制限(例)外部連携/API、ファイルアップロード、共有
- ログ: 目的・入力区分・利用ツール・出力の用途を記録(監査用)
- 承認: 対外公開物/顧客向け成果物は人のレビューを必須とする
## 5. 例外申請とインシデント対応
- 例外申請: 目的/対象データ/代替策/リスク/承認者( )/ログ保存の方法
- インシデント初動: ①利用停止 ②関係者連絡 ③ログ保全 ④影響範囲確認 ⑤再発防止
- 連絡先: 情シス( )/法務( )/現場責任者( )補足: 実運用では「入力データ分類表」「例外申請フォーム」「インシデント初動手順」を別紙で持つと、現場が迷いません。 参考としてAIエージェントの作り方の「権限/ログ設計」の考え方も同じです。
禁止事項・権限・ログまで“穴埋め式”で完成
入力データ分類表/例外申請フォーム/インシデント初動手順もセットで用意すると、社内展開が一気に楽になります。
最短導入ステップ:30日でガイドラインを「運用」まで持っていく
文書を作るだけで終わらせず、PoC→定着までを30日で回すのが最短です。ポイントは「使い方研修」より「事故らない運用研修」を軸にすることです。
0〜7日:現状把握(シャドーAI/利用ツール/用途)と方針決定
- 「誰が何を使っているか」を棚卸し(禁止ではなく実態把握から)。
- まずは対象範囲を限定(例: 提案書の下書き、社内FAQの要約など)。
- 入力NGの基準(データ分類)を暫定で決め、グレーは例外申請に逃がす。
8〜14日:入力データ分類+権限設計(誰が何をできるか)
- データ分類表を作り、部署×役割×データ種別でマトリクス化する。
- 会社管理アカウントと個人アカウントの扱いを決める(業務は原則会社管理)。
- 対外公開物の承認者(レビュー責任)を決める。
15〜30日:ログ/監査+教育(研修)+定着施策
- ログの粒度を決める(目的・入力区分・出力用途・共有先)。
- 「OK例/NG例」の社内ナレッジを作り、現場の判断を統一する。
- 教育は「プロンプト技術」より「事故らない運用」を優先。社内研修の設計は社内AI研修の始め方が参考になります。
- 研修を体系化したい場合は法人向けAI研修で成果を出す完全ガイドも合わせて確認してください。
部門別の運用例(営業/人事/開発)
「うちはどこまでOK?」は、部門の業務データと責任の置き方で変わります。ここではOK例・NG例の粒度まで落とします。
営業:提案書/メールでのOK例・NG例(顧客情報の扱い)
営業は顧客情報が混ざりやすい領域です。ポイントは「顧客固有情報を入れない」形に分解してAIに投げることです。
OK例
- 公開情報をもとに競合比較表の叩き台を作る。
- 提案書の構成案を作る(固有名詞・単価・契約条件は伏せる)。
- メール文面のトーン調整(宛先名や案件固有情報は入れない)。
NG例
- 顧客名・担当者名・メール・住所をそのまま貼り付ける。
- 契約書/見積/単価表をそのままアップロードする(原則NG)。
- 生成した提案文を事実確認なしで顧客へ送る。
人事・採用:求人票・スクリーニング・評価の注意点
人事は個人情報と差別リスクが強く、ガイドライン上は「原則NG」が増えます。個人情報を入力しない設計(匿名化・要約)と、評価の説明責任を守るレビュー体制が重要です。 実務の活用例はAI × 人事・採用の実践ガイドも参考になります。
- 求人票のたたき台作成はOK(公開情報と自社の公開可能情報で)。
- 履歴書や評価コメントの入力は原則NG(個人情報・機微が混ざる)。
- スクリーニングは「補助」まで(最終判断は人/根拠の記録を残す)。
開発:Copilot/AIコーディングの情報管理とレビュー運用
開発はソースコードや認証情報の混入が最大リスクです。運用の基本は「秘密情報を入力しない」「生成コードをレビューする」「ライセンス/脆弱性の観点を含める」です。 チーム導入時のルールはGitHub Copilotの使い方に詳しくまとめています。
最小運用ルール(開発)
- APIキー/秘密鍵/パスワード/顧客データをプロンプトに貼らない。
- 生成コードは必ずレビューし、テストを通す(“動く”と“正しい”は別)。
- 外部送信や自動実行を伴う連携は、権限とログの設計を先にする。
よくある質問(FAQ)+チェックリスト
反対意見(法務/情シス/現場)を先回りして、意思決定を加速させます。迷うポイントは「データ分類」と「例外申請」に寄せて整理するとブレません。
7つのFAQ
- Q. 生成AI(ChatGPT等)に社内情報を入力しても大丈夫ですか?
- A. 原則はデータ分類で判断します。社外秘・個人情報・機微情報は入力禁止とし、例外が必要な場合は申請/承認フロー(目的・対象データ・代替策・ログ保存)を通して判断します。
- Q. ガイドラインは「禁止」中心にした方が安全では?
- A. 禁止だけだと現場のシャドーAIが増えやすく、結果的に統制不能になります。安全に使える範囲を定義し、ログと権限で統制する方が現実的です。
- Q. ガイドラインに最低限入れるべき項目は何ですか?
- A. 「入力ルール(データ分類)」「禁止事項(NG例)」「権限」「ログ/監査」「例外申請」「インシデント対応」の6点が最小セットです。
- Q. 生成物(文章/画像/コード)はそのまま社外に出してよいですか?
- A. 原則は人の確認を必須にし、第三者権利・機密混入・誤情報のチェック工程を定義します。用途により承認レベルを分けて運用します。
- Q. どの部署がガイドラインの責任者になるべきですか?
- A. 情シス/セキュリティ、法務、現場(利用部門)の三者で役割分担し、最終責任(改定責任者)を1名に明確化します。
- Q. どれくらいの頻度で見直すべきですか?
- A. 原則は四半期〜半期で定期レビューし、ツール変更・事故発生・法令/社内規程変更があれば随時改定します。
- Q. まず何日で導入できますか?
- A. 1枚雛形での暫定運用は最短1〜2週間、ログ/権限/教育まで含めた運用定着は30日を目安に設計します。
導入チェックリスト(最低限)
1枚雛形を作ったら、次に「運用できるか」を確認します。以下が埋まっていれば、暫定運用を開始できます。
- 対象範囲(対象者・対象ツール・対象データ)が明文化されている
- 入力NGの基準がデータ分類で定義され、例外申請の導線がある
- 禁止事項がNG例で書かれている(現場が判断できる)
- 会社管理アカウント/個人アカウントの扱いが決まっている
- 権限(連携/共有/ファイル)と承認(レビュー責任者)が定義されている
- ログの保存項目(目的・入力区分・出力用途)が決まっている
- インシデント初動の連絡先と手順(止血)が用意されている
- 見直し頻度(四半期/半期)と改定責任者が決まっている
稟議が止まるポイント、先に潰します
現状ヒアリング→社内向け叩き台まで最短で整理。ガイドライン整備、研修、導入設計まで一緒に進めたい方はご相談ください。
関連リンク
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