生成AI 著作権商用利用画像/動画/文章社内チェックリスト

生成AIの著作権・商用利用ガイド(画像/動画/文章)|現場で迷う論点を整理【2026年版】

生成AIを業務に入れると、最終的にぶつかるのが「著作権」と「商用利用」です。画像・動画・文章のいずれも、判断は 利用規約/学習データ/生成物の類似性で揺れます。

本記事では、日本の現行整理(著作権法の原則・30条の4)を踏まえつつ、現場で迷いやすい論点を「使い方のチェック項目」として落とし込みます。 法務レビュー前の叩き台としても使えるように、社内チェックリスト(8項目)を添えます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の法的助言ではありません。最終判断は社内法務/顧問弁護士とご確認ください。

要点まとめ

  • AI生成物に著作権が発生するかは、「人間の創作的関与」の度合いで判断されます。
  • 商用利用は利用規約・学習データ・類似性の3点をクリアすることが条件です。
  • 社内チェックリストを整備し、用途(社内/社外、広告/記事/資料、制作物/検証)別に判断基準を持つのが最短です。

まずは「何が著作物か」を揃えます。社内議論が割れるときは、法律用語の前提がズレていることが多いです。

著作権法の原則(思想・感情の創作的表現)

日本の著作権は「思想又は感情を創作的に表現したもの」を保護します。ポイントは「誰が創作したか」と「どこに創作性があるか」です。 生成AIの利用では、プロンプト、編集、選択、構成、レイアウトなどの人の関与が争点になりやすくなります。

AI生成物と著作権の関係(日本の現行整理)

実務上は「人間の創作的表現が認められないAI生成部分は、著作物に当たらない可能性が高い」「人が創作的に関与した部分は著作物になりうる」と整理しておくと運用が安定します。 外部公開や商用利用では、著作権だけでなく契約(利用規約)の制約も同時に見る必要があります。

著作権法30条の4(情報解析の例外規定)

学習(情報解析)に著作物が含まれる場合でも、日本では著作権法30条の4により、一定の要件のもとで情報解析のための複製等が権利制限される整理があります。 ただし、個別の適法性は利用態様で変わり得ます。また、生成物が特定作品に似すぎる場合や、別の権利(商標、パブリシティ、肖像等)が絡む場合は別論点になります。

画像は「似た/似てない」で揉めます。結論は、利用規約と類似性チェックを運用に組み込み、再現性の高い生成フローを避けることです。

主要サービスの利用規約の見方(Midjourney / DALL·E / Stable Diffusion)

各サービスで「商用利用可否」「クレジット要否」「禁止コンテンツ」「学習利用(入力データの扱い)」が異なります。 ルールは頻繁に更新されるため、社内では「ツール別に最新版の規約URLと要点」を台帳化するのが安全です。

チェック① 利用規約

商用利用、クレジット、禁止事項、入力データの取扱いを確認。プラン差(無料/有料)で条件が変わることもあります。

チェック② 学習データ

生成元モデルの学習データに関する開示、追加学習(LoRA等)で持ち込む素材の権利を確認します。

チェック③ 類似性

既存作品に酷似しないか(構図、特徴、ロゴ、キャラ、スタイル)を人が確認。必要なら差し替えます。

類似性リスクと対策(i2i / LoRA / 特定作家スタイル模倣)

i2i(画像→画像)や特定作家名の指定、特定作品のワンシーンを想起させる指示は、類似性の再現性を高めます。 実務対策は「作家名・作品名を指示しない」「参照素材は権利クリア済みに限定」「出力は公開前に第三者権利(著作権/商標/肖像)でチェック」です。

画像生成のツール選びと運用フローはAI画像生成おすすめツール比較も参考になります。

文章は「著作権」よりも先に「誤情報」と「盗用(類似)」が事故になります。公開前提なら、ファクトチェックと類似性チェックを工程化します。

ChatGPT/Claude等の出力物の権利(実務上の見方)

多くの文章生成AIは、利用規約上は「出力物を利用できる」設計になっています。ただし、著作権侵害の有無は規約ではなく、アウトプットの内容(他者作品との類似)で判断されます。 また、社内の入力データの扱い(学習/保存/共有)も規約・設定で変わるため、運用上は「入力データの禁止事項」を先に決める必要があります。

商用コンテンツに使うときの注意点

  • 誤情報:一次情報(公式・統計・論文)に当たり、出典を残す
  • 類似:特定サイトや書籍の言い回しを引きずっていないか確認する
  • 機密:社外秘・個人情報が混入していないか、公開前に検査する

事実確認・ファクトチェックの必要性

「生成→そのまま公開」を禁止し、最低でも「生成→人の編集→最終レビュー→公開」の順にします。とくに法律・医療・金融などは誤情報の影響が大きいため、レビュー責任者を明確化してください。

動画は「画像の論点」に加えて、音楽・声・出演者の権利が重なります。素材の権利を分解して管理するのがコツです。

Sora / Runway等の利用規約(見るべきポイント)

動画生成では、出力物だけでなく、アップロード素材(画像・動画・音声)の取り扱いが重要です。社内規程では、アップロード可能な素材の範囲(自社制作/権利クリア済み/許諾済み)を明確にします。

音楽・声の権利問題(BGM / ナレーション / 声優)

BGMの著作権・隣接権、ナレーションの実演家人格権/契約、声の類似(“〇〇風の声”)など、炎上リスクが高い論点です。 声や音は「似てしまった」でアウトになりやすいので、社内のNG例に入れておくと安全です。

商用利用時のクレジット・開示ルール

クレジット表記やAI利用の開示は、利用規約・媒体(広告/PR)・国/地域で扱いが変わります。グローバル配信の可能性がある場合は、後述の海外動向も踏まえて「開示ルール」を決めます。 動画生成のツール比較はAI動画生成ツールおすすめ比較も参考になります。

海外の法規制と最新動向

海外展開(越境EC、広告、アプリ配信)を想定する場合、国内ルールだけでは足りません。社内運用は「最も厳しい要件」に寄せるのが現実的です。

日本

  • 著作権法30条の4(情報解析の例外)
  • 文化庁「AIと著作権に関する考え方」(令和6年3月)等を参照
  • 実務は「規約+類似性+権利(商標/肖像)」で統制

EU

  • AI Act:透明性義務(ディープフェイク等の表示など。透明性義務は2026年8月から段階適用)
  • 著作権指令(DSM指令)との整合
  • 広告/プラットフォーム要件も含めた運用が必要

米国

  • 米国著作権局:人間の創作性を重視
  • 登録は人間の創作部分が対象(AI生成要素は開示・除外が必要になる場合)
  • 判例・係争動向は変動が大きい

中国

  • 生成AI管理規定(表示・管理の要件)
  • プラットフォーム側の審査要件が厳しい領域がある
  • 越境配信は現地ルールの確認が必須

社内チェックリスト(8項目)

まずは「誰が・何を・どの基準で」見るかを決めます。迷ったら、社外公開物(広告・Web・動画)を最も厳しい基準にして揃えるのが安全です。

チェック項目判断基準担当
利用規約確認ツール/プランの商用可否、禁止事項、クレジット/開示要件を満たす制作/情シス
学習データリスク評価追加学習素材(LoRA等)は権利クリア済み、持ち込みデータは許諾済み制作/法務
類似性チェック特定作品/作家/ブランドに酷似しない。必要なら差し替え・再生成制作
第三者権利確認著作権だけでなく商標、肖像、パブリシティ、音源/実演の権利も確認法務
用途別承認レベル社外公開物は必ずレビュー。社内資料でも配布範囲に応じて基準を分ける責任者
クレジット表記/開示規約・媒体・国/地域要件に従い、必要ならAI利用を明示する広報/制作
保存・証跡管理プロンプト、参照素材、生成日時、使用ツール/モデル、採用理由を残す制作/情シス
定期見直し規約・法規制・社内事例の変化に合わせ、四半期〜半期で更新する責任者

よくあるNG例と対処法

NG例は「ルール違反」というより、現場がつい踏みがちな近道です。先に例を共有して、事故の芽を摘みます。

NG例1

特定アーティストのスタイルを指定して生成

作家名・作品名の指示は、類似性の再現性を上げます。スタイル模倣で炎上・差し止めリスクもあります。

対処: 作家名/作品名を使わず、要素分解(配色/質感/構図)で指示。参照素材は権利クリア済みに限定します。

NG例2

他社ロゴ・キャラクターに似た画像を商用利用

著作権だけでなく、商標や不正競争の論点になります。広告では特にリスクが高いです。

対処: 類似性チェックを必須化し、少しでも似たら差し替え。素材はストック/自社制作へ切り替えます。

NG例3

AI生成文章を著作者名義で論文に使用

著作権とは別に、研究倫理・引用ルール・開示義務の問題になります。公開後の信頼毀損が大きいです。

対処: 生成AIの利用範囲を明確化し、出典・引用・開示ルールに従う。最終責任は著者が負います。

FAQ

社内で議論になりやすい質問を、運用できる形でまとめます。迷ったら「規約」「類似性」「証跡」の3点に戻してください。

Q. AI生成物に著作権はありますか?
A. 日本の著作権法では「思想又は感情を創作的に表現したもの」が著作物です。AIが自動生成しただけで人間の創作的表現が認められない場合、著作物に当たらず著作権の保護対象にならない可能性が高い一方、プロンプトの工夫や選択・編集・構成など人間の創作的関与がある部分は著作物になり得ます。
Q. AI画像を商用利用しても問題ないですか?
A. 生成AI利用規約、学習データの権利、生成物の類似性の3点をクリアすれば商用利用可能です。ただし、特定の著作物に酷似した出力は著作権侵害のリスクがあります。
Q. 文章生成AIの出力をそのまま公開してよいですか?
A. 原則として人間の確認・編集を経てから公開することを推奨します。誤情報、他者の著作物との類似、機密情報の混入をチェックする工程が必要です。
Q. 学習データに著作物が含まれていた場合、生成物は違法ですか?
A. 日本では著作権法30条の4(情報解析)により、一定の要件のもとで情報解析目的の利用が権利制限される整理があります。ただし個別判断であり、生成物が特定の著作物に類似する場合は侵害リスクが残ります。
Q. 社内でAI生成画像を使う場合もチェックが必要ですか?
A. 社外公開しなくても、社内資料に他者の著作物に類似した画像を使用するとリスクがあります。用途に応じたチェック基準を設けることを推奨します。
Q. 動画生成AIの出力物の権利はどうなりますか?
A. 画像と同様に、AI生成部分でも人間の創作的表現が認められない場合は著作物に当たらない可能性が高い一方、人間が編集・演出を加えた部分は著作物になりえます。音楽・声優の権利にも注意が必要です。
Q. 海外でAI生成物を使う場合、日本と法律が違いますか?
A. はい。米国、EU、中国など各国で対応が異なります。EUではAI Actで透明性義務(ディープフェイク等の表示など)が段階適用され、透明性義務は2026年8月から適用されます。米国では米国著作権局が「人間の創作性」を重視しており、登録手続でAI生成部分の開示・除外が求められる場合があります。

まとめ

生成AIの著作権・商用利用は、「著作権だけ」の話ではなく、利用規約・学習データ・類似性・第三者権利・海外規制が絡む総合判断です。 まずは社内チェックリストを作り、用途別に承認レベルと証跡を揃えることで、現場の迷いと事故を同時に減らせます。

迷うなら、社内ルール設計から一緒に整えます

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